ネタは向こうでやれよといわれそうですが



どこか遠くを見ていることがある。
此処に居るのに、此処に居ない。
それがやけに恐ろしくなって触れようとすると彼は気づいて振り返り微笑むのだけど、
かえって遣る瀬無いような気持ちばかりが増えていく。


彼が振り返るのは、近づく気配を察したからだ。
彼が安心させるように笑うのは、振り返ったところに居たのが自分だからだ。
その二つは厳然として違ったところに位置していて、
たとえば何を言わなくても、其処に居たのが自分だと判られている、訳ではない。


泣きたくなる。その理由を知りたくない、と思った。




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どこか遠くを見ていることがある。
ふとした拍子に、意識が違うところに飛んでいく。
それはとても心地良く、けれどいつかこの精神は身体に戻って来れなくなるんじゃないか、
なんて思っては苦笑する。
苦笑したまま戻って来れないでいた心を、ところが最近では小さな手が引いてくれるようになった。


気配を感じて振り返るのは身体に染み付いた訓練の賜物。
視線の先では大抵、手を此方に伸ばしかけたままの姿勢で
あの子が困ったような不安そうな顔をして固まっていて、不謹慎なのだろうけど、嬉しくなる。
笑いかけて伸ばした手は乱暴に振り払われても、
並んで歩く事は許してくれるようになった。


少し前まで、平穏とは孤独と同義語だった。自分は随分贅沢になったな、と思う。










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短すぎるのでこっちで…なんとなく思いついた無音のシーン。
レインは相当独占欲が強いと言うか、我侭な子だと思います。
だが、それがいい(駄目な親)