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6.凭れ掛かる(鳥魔)
さらさらと、指の隙間を深紅が零れる。
柔らかな髪には縺れもなく、指を通す必要などもなかったが
そうして撫でるように梳いてやると、猫のように丸くなって眠る少年の
寝顔がほんの僅かに緩むようなので。
 
 
凍えているのか、怯えているのか、縮めた四肢がほんの少しだけ、弛緩するようなので。
 
7.立膝(聖魔)
遥かに見上げる厳つい造形の顔が、まるで悪戯を見つかった子供のような表情をしていたので。
似合いませんよ、と一つ、笑う。

8.手で覆う(聖魔)
逃げ出せるものなら逃げ出したいのに、過剰な血液を送り込まれた頭は
全く望むように身体を動かしてくれない。
漸く振り返って、駆け出そうと一歩踏み出して、許されたのはそこまでだった。

9.口移し(鳥魔)
繰り返される幼い口付け以上に雄弁なものなど知らない。
頬に唇の動きだけで伝えてくるその感情がくすぐったく、愛おしかった。

10.頭を撫ぜる(鳥魔)
抱きかかえ、引き寄せる動きにも気付かず、その人は無防備に眠り続けているだけ。
胸元に感じる安らいだ呼吸の音に、自分もまたいつしか瞼を下ろしていた。